新国立劇場・小劇場にて「セルセ」

セルセ、そう、ヘンデルのペルシァ王クセルクセスを主役に置いたオペラで、日本では主役が冒頭に歌うオンブラ・マイ・フがCMをきっかけに有名になった作品です。

最近BSやDVDで見まするに、バロックオペラからヘンデルの作品にかけて現代的な読み替えを行なうことが世界的に流行中です。どこかの劇場のロデリンダなんか良かった、と思いました。この4日間の公演もこの路線を狙ったもののようです。

解説によりますと「春。公園の一角で、花見客から募った出演者が演じる「セルセ」の映画撮影が始まる。ペルシャ王セルセには婚約者アマストレがいるにもかかわらず、弟アルサメーネの恋人ロミルダに横恋慕し、王の権力によって我が物に・・・」。そう、どうしようもない好色我儘王の物語です。

が、「春。公園の一角で、花見客から募った・・・」が現代風の読み替えです。全体のセッティングのアイデアは良いと思います。

しかし、舞台の周りに小型カメラを担いだカメラマンがうろうろとしカチンコを切るアシスタントがいたり、で少々五月蝿い。ダンサーの踊りもバロックダンスではなく舞踏風の踊りになったりするし、時々揃わない。

おまけにアルサメーネの従僕エルヴィーロが「犬」になって狂言回しをしたり。

ということで、このセルセは、下北沢か新宿の小劇場のコメディー作品に近くなりました。

私の感想はニュートラルです。どうせやるならもう少しドタバタに徹するか、あるいは少し様式美を出してもらいたかったな、と思います。野田氏が大劇場で演出したマクベスよりはましかな。

ダンスや合唱の所作はもっと美しくピシリと揃えてほしかったです。舞台装置はもっと無機質にするほうが美的だったのではないのかな、と思います。少しごてごてしていました。

オケと合唱は慣れない曲であろうに頑張っていた、と思います。オケには例えば日本のエースのBCJを持って来たい所ですが、望みすぎは駄目です。

歌手達は、カストラートの役はソプラノやメゾが歌うべき、という議論もあるでしょうが、私は例えばテオ・アダムのシーザー等も良いと思ったので違和感がありません。ただ、低音になるほどメリスマ歌唱が難しくなるのは苦しい所。

演出家に盛んにBooが飛んでいました。めげる事無く、もっと磨いて下さい。でも同じ演出での再演は駄目ですよ。

幕間の休憩時間の終わり近くにロビーを合唱の人達が何やら歌いながら早足で通過しました。このアイデアはいいですね。

G.F.HÄNDEL : Serse