ミスターS@ブルックナー

誰が言ったか、ミスターS、ちゃんとスタニスラフ・スクロヴァチェフスキィという名前があるのに、読み難いので、いつのまにやら米国の誰かにこういう名前で呼ばれてきた彼。

余談ですが、あの元祖もームスの中澤裕子が出演するFMのクラシック番組には「スタニスラフ・スクロヴァチェフスキィ・コーナー」というのがあった筈です。舌を噛みそうな演奏家や作曲家の名前を探してきたリスナーが投稿する、という趣向です。

余談終わり、この彼が、メジャー扱いされる様になって来たのはここ10年未満のことかも知れません。かつては有名ソリストのコンチェルトの伴奏指揮者的な扱いでした。

今や日本では独逸音楽の神様扱いです。アルテ・ノヴァから発売されたブルックナーのCDがクラシックとしては大ヒットとなり、かくいう私も廉価盤なので買っています。N響にも客演したりしています。しかし、私にはこのCDはファーストチョイスではありませんでした。時々行なわれるギアチャンジのようなテンポ変動に違和感を覚える時があったのです。

本日は、親切な方よりチケットをいただき、ミスターS指揮の読売日本交響楽団が演奏するブルックナーの6番を聴いて来ました。

前半の自作自演曲は、特に思うこともないので割愛。さて、ブルックナーです。まずオケの音が磨かれたように透明度が高い、と思えました。楽員の集中力が高まっている証拠でしょう。そして、大事なテンポ。私はこの作曲家の曲はゆっくりと呼吸しつつ散歩するようなテンポで進行して欲しいのです。意識的なテンポの変化は肌に合いません。

今日の演奏では、過去のCD録音で感じたギアチャンジ的なテンポ変動は感じられませんでした。ゆったりと呼吸するようなテンポで音楽が進んでいき、自然の中を散歩するように曲が進行していきます。これは良い。私の好きなブルックナーです。それに金管楽器の演奏者達が余裕をもって音を出しています。2楽章、3楽章が白眉でした。

かつては、技術的な問題がありましたが、朝比奈さんが指揮する大阪フィルが「散歩するような」ブルックナーを聴かせてくれました。

今後しばらくはこのミスターSと読売さんのコンビが私好みのブルックナーを聴かせてくれる予感がします。読売日響の常任指揮者に就任されるそうですから。


最後に、この場をお借りして、この素晴らしい演奏会のチケットをお譲りいただいたNさんに厚く御礼申し上げます。